ご機嫌預金
2017年9月19日 16時52分毎日新聞 9月14日 「女の気持ち」 主婦の方の投稿より
「ご機嫌預金」
このごろ、不思議でたまらないことがある。夫という人間だ。とにかく日々ご機嫌がいいのだ。私は喜怒哀楽がはっきりしているので、おなかを抱えて大笑いしたり、自己嫌悪で落ち込んだり、と揺れ幅が大きい。それに比べて夫の周りには、ゆったりとした穏やかな空気が流れているのだ。
ゆうべ食卓で「ちょっと姿勢が悪いわ。気を付けてね。」と注意をした。すると彼は、にこにこ顔で「はーい。今日もほめてくれてありがとう」と言って、姿勢を直した。いつもこんな調子なので少々、拍子抜けする。私の文句や小言を「ほめことば」と転じて解釈する彼のユーモア精神には脱帽だ。「いやいや、ほめてないら・・・」と言いながら、つい噴き出してしまう。
彼の説明によると「自分のことを大切に考えているからこそのアドバイスは、ありがたい。だから『ほめことば』の由」。うーん。うなるだけの私だ。
富や名声とは全く無縁で生きてきた。40年近い2人の暮らしを支えてきたのは、夫のご機嫌だった、と痛感している。
我が家は彼のおかげで、本当のお金はともかく、ご機嫌預金だけは相当たまっているはずだ。「ご機嫌の神様」が気持ちよく過ごしていると、周りの人も機嫌がよくなる、という利子がつくのでうれしい限りだ。
今後の老いへの不安は、正直ある。でも、たっぷりのご機嫌預金があればなんとかなりそうな気がする。
夫のご機嫌が、長く長く続きますようにー。